伊東達矢校長ブログ

2026.03.14

和して同ぜず

 3月14日(土)は卒業証書授与式でした。式辞でこんなことを述べました。 
 ご卒業、おめでとうございます。
 わたしが名進研小学校に来たとき、みなさんは3年生。遠足でいっしょに東谷山に登りました。暑い日でした。
 4年生の宿泊学習、5年生の宿泊学習、そして6年生の修学旅行にも同行しました。
 そんなご縁のあるみなさんが卒業のときを迎え、わたしの感慨はひとしおです。
 名進研小学校では、青・黄・紫・赤・緑・橙の順で学年の名札の色が決まっています。わたしは「あおきむら・あかみどりだい」と覚えました。
 みなさんの名札は青。ですからみなさんの卒業後、4月に入学する新1年生たちの名札の色は、入れ替わりで青になります。
 わたしが五十年前に入学した中学でも、靴紐の色で学年を区別しています。順番は「あおきみどり」。つまり青・黄・緑の順です。
 思い返せばわたしの靴紐の色も青でした。
 名札や靴紐の色ではありませんが、学校で教師をしていて毎年感じるのは、学年によってカラーが違う、固有の持ち味があるということです。
 みなさんの学年のカラーを一言で言えば「元気いっぱい」ではないでしょうか。きのうの「6年生を送る会」で、在校生からの贈る言葉の中にもありましたね。
 先日6年生の保護者の方をお招きし、子どもたちがお茶を点てる会がありました。その席で伝統文化の先生が、
「今年度の6年生は本当に元気でした。わんぱくでやんちゃだったからよく叱ることもありましたが、それだけたくさんのパワーを子どもたちからもらうことができました」
とおっしゃっていたのもうなずけます。
 「元気いっぱい」。それがみなさんの学年カラーでした。
 グループダイナミクスという言葉があります。日本語にすると「集団力学」です。集団とそこに所属する個人が互いに影響を与え合い、独自の特性や行動が生まれることを言います。
 みんなが一つにまとまって手を取り合い、足並みを揃え、力を合わせてつくりあげる。それを、連帯・協力・調和・団結といった熟語で言い表します。運動会の集団行動や、学校祭での合唱・合奏で、みなさんも実感したことでしょう。
 一人ではできないことを、みんななら成し遂げることができます。それが集団の絆を強め、帰属意識を高めます。メンバー全員のモチベーションアップに作用するのです。
 グループダイナミクスは、クラスや学年、同窓生の集まり、地域、さらには国レベルでも認められます。先だって開催されたミラノ・コルティナ冬季オリンピックにおける日本勢のメダルラッシュには、日本全体がこぞって沸きました。
 しかし、みなさんなら気づいているはずです。
 こうした集団力学が時に同調圧力となり、「浮いていると思われたくない」「仲間はずれにされないようにしよう」という心理や行動を生むことを。
 「朱に交われば赤くなる」「出る杭は打たれる」「寄らば大樹の陰」。こうした言葉があるのは、わたしたちが同調圧力に影響されがちであることを表しています。
 学年やクラスにいたときの自分を思い返してみて、みなさんはどうだったでしょうか。
 自らの考えに反しているのに、周りに合わせてしまったことはありませんでしたか。
 おかしいと感じても、「空気を読めない奴」と思われるのがいやで言い出せなかったことはありませんでしたか。
 はやしたてられることを恐れ、易きに流れたことはありませんでしたか。
 グループダイナミクスは集団の絆を強くするプラスの面がある一方で、集団の雰囲気に流されるというマイナスの面を持ちます。
 そこでみなさんに、「和して同ぜず」という言葉を贈りたいと思います。中国の思想家、孔子の教えをまとめた『論語』にある言葉です。
 「和して同ぜず」とは、人と協力しながらも、自分の考えを持ち、むやみに人に従うことなく、主体的に行動するという意味です。
 先行き不透明な時代、SNSや生成AIが急速に発達しています。それらは、わたしたちの考えや行動を方向づけようとします。
 インターネット上にあふれる様々な情報を鵜呑みにせず、「みんなが言っているから」という不確かな理由に頼ることなく、自分の信じるところはどこにあるかを常に追究し続けてください。
 中学へ進学するみなさんには、表面的な情報に惑わされず、その奥にある本質や背景、隠された意味、因果関係を見抜く力、すなわち洞察力を身につけるよう、努めてください。
 「和して同ぜず」。答えのない社会で、信念ある人になってほしいと願います。
 保護者のみなさま、ご子息、ご息女のご卒業を心よりお祝い申し上げます。
 江戸時代の商家の子育て訓に、「三つ心、六つ躾、九つ言葉、十二文、十五理で末決まる」というのがあります。
 三つ、六つ、九つという「つ」の付く年齢のうちは親が手をかける、「つ」が取れたら目をかけると言います。
 小学校を巣立つ十二歳の子どもたちは、「十二文」に当たります。「文」、つまり学問を修めたということです。いま子どもたちは、学を修め、自分の意見を表明できるようになっているはずです。これから中学を卒業する十五歳までには「十五理」、すなわち道理を得て、洞察力を持って将来を見据えた生き方をすることが期待されます。
 大人になっていくわが子の姿に、親として寂しさを感じるときもあるかもしれませんが、着実に成長していくわが子のことを誇りに思い、ご自身の子育てを振り返ってください。
 これまで本校にひとかたならぬご支援を賜りましたことに、厚くお礼申し上げます。
 第十一期卒業生のみなさんの未来に幸あれと願い、わたしの式辞とします。
 令和八年三月十四日
                     学校法人名進研学園 名進研小学校 校長 伊東達矢

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