伊東達矢校長ブログ
2025.06.30
夢
「夢と希望」という言葉があるように、夢は将来への期待を表します。名進研小学校のミッションにも、「夢の実現とその夢を社会貢献につなげられるよう導きます」とあります。
一方、「夢まぼろし」という言い方で、あっけなく消えてしまうことにも使います。織田信長が好んだ幸若舞「敦盛」の一節には、「人間(じんかん)五十年、下天(げてん)の内をくらぶれば、夢まぼろしのごとくなり」とあります。人に夢と書けば「はかない」と読みます。
大人はよく子どもに夢について尋ねます。
わたしがある幼稚園の子に聞いたら、その子は前の晩に見た楽しい夢の話をしてくれました。「その夢じゃなくて、何になりたいかっていう夢は?」と聞き直すと、ちょっと考えた後、うれしそうに「ウサギ!」と言いました。その子にとって、楽しいもの、好きなものが夢なのでしょう。
子どもは大人に比べて圧倒的にボキャブラリーが少ないのですが、それだけに新たな言葉を貪欲に吸収します。初めて耳にした言葉は自分で繰り返し言い、使ってみます。
言葉を覚えたての子(2~4歳くらい)は、ほほえましい言い間違えをします。ペットボトルは「テットボトル」、目玉焼きは「めだやまき」でした。パトカーはパトロールカーだと教えたら「パトルカー」になりました。映画『となりのトトロ』に登場する4歳のメイは、とうもろこしを「とうもころし」と言っています。
子どもが「ピーナフコ」の前でスイミングのバスに乗ると言うので、何のことか首を傾げていたら、以前そこにあったスーパーを親が「旧ナフコ」と言っていたのを聞いていて、「旧」を「Q」、そして習ったばかりのアルファベットでQの前の「P」に転換して「ピーナフコ」になったのでした。
こうした子どもの言語習得過程を身近にしていると、夢という言葉にもいろいろな意味があって、大人の考える夢を子どもに押しつけていいのかと思ってしまいます。
学校では「キャリア教育」が行われています。文部科学省は、日本の子どもは「自分の将来のために学習を行う意識が国際的にみて低く」、「キャリア教育を実践し、学校生活と社会生活や職業生活を結び、関連付け、将来の夢と学業を結びつけることにより、生徒・学生等の学習意欲を喚起すること」が重要だとしてきました。しかし最近では、「将来の夢を描くことばかりに力点が置かれ、『働くこと』の現実や必要な資質・能力の育成につなげていく指導が軽視されている」とも指摘しています。
キャリア教育で使われる「将来の夢」は職業に直結しています。それはわたしたち大人が「将来何になりたい?」と繰り返し子どもに聞き、子どもたちがそれに職業を答えてきたことと関連している気がします。実際は、子どもが「金持ちになりたい」と言えば眉をひそめ、「およめさん」と答えれば時代が違うと諭し、「ユーチューバー」と言えば安定した職ではないと言いたくなります。しかし近い将来、いまの職の5割がなくなるという時代に、職業生活を考えること自体が難しいのではないでしょうか。
「夢は何?」と聞かれて「ウサギ!」と答えた子どもの気持ちを忘れないようにしたいと思います。

伊東 達矢
ご挨拶- 2025年6月 [2]
- 2025年5月 [2]
- 2025年4月 [2]
- 2025年3月 [2]
- 2025年2月 [2]
- 2025年1月 [2]
- 2024年12月 [2]
- 2024年11月 [2]
- 2024年10月 [2]
- 2024年9月 [2]
- 2024年8月 [2]
- 2024年7月 [2]
- 2024年6月 [2]
- 2024年5月 [2]
- 2024年4月 [2]
- 2024年3月 [2]
- 2024年2月 [2]
- 2024年1月 [2]
- 2023年12月 [2]
- 2023年11月 [2]
- 2023年10月 [2]
- 2023年9月 [2]
- 2023年8月 [2]
- 2023年7月 [3]
- 2023年6月 [2]
- 2023年5月 [2]
- 2023年4月 [4]
- 2023年3月 [2]
- 2023年2月 [2]
- 2023年1月 [2]
- 2022年12月 [2]
- 2022年11月 [3]
- 2022年10月 [3]
- 2022年9月 [2]
- 2022年8月 [2]
- 2022年7月 [5]
- 2022年6月 [2]
- 2022年5月 [3]
- 2022年4月 [6]
おすすめコンテンツ
Contents