伊東達矢校長ブログ
2025.11.25
敵か味方か
多様化、複雑化の進む現代、「敵か味方か」という二元論が盛んです。
AかBかという二元論は、問題を単純化します。
単純化すると、問題を理解できた気になります。
「敵か味方か」の世界では、敵は打ち倒さなければいけない存在です。そうしないと自分が生き残れません。
だから、相手を間違っていると断じ、価値観の違いを認めず、異なる考えに耳を塞ぎます。自分は正しいと思い込み、相手の意見に耳を貸さず、問題点を勝ち負けにすり替えます。話し合いで意見をまとめようとせず、一方的に論破しようとします。
その結果、「勝ち組」と「負け組」に仕分けられ、両者が交わることはありません。
相手に勝ちたいと思うのは、人間の利己的な本能です。
子どもが自分の欲動に忠実で、したいことがまず先に立つのも当然です。
1年生の子どもたちが一つの物(たいしてこだわるほどのものでないことが多い)を取り合っています。
一人の子が独占しました。
別の子が来て「貸して」と言ってそれを引っ張ります。
ここで「いいよ」と言って手渡す子は多くありません。
握りしめて手放さず、口をぎゅっと結んで全身で抵抗します。
こんな場面で大人はどうしますか。
「貸してあげなさい」と言う。
「独り占めはだめだよ」と諭す。
「順番だよ」と教える。
どれもありえます。
わたしなら、手放そうとしないその子に、「それがとても好きなんですね。どんなところが好きですか」と聞いてみます。
本当にそれが好きでこだわっているなら、きっとその理由を話してくれます。
でもたいていは、「もういいよ、貸してあげる」と譲ります。
それは、相手を打ち負かしたいという本能のほかに、相手に優しくしたいという本能も人間に備わっているからだとわたしは思います。
大人は子どもに命令したり、教示したりするだけではいけません。叱ることばかり繰り返していると、子どもは言うことを聞かなくなります。叱る頻度は高くなる一方なのに、子どもの行動の改善は進まないというジレンマに陥ります。
子どもの気持ちに寄り添うというのは、自分は愛されている、信頼されている、見守られていると子どもが感じるようにすることです。他者を思いやり、優しくしようという本能があることを指摘してやることが、子どもの安心につながります。
「敵か味方か」という二元論は、子どもの成長に全くふさわしくありません。



伊東 達矢
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