伊東達矢校長ブログ
2022.07.20
読書感想文②
読む本は学校が指定します。課題図書とも言います。宿題として課す以上、これは避けられません。どんな本を読んでいいかわからない子どももいますから、本を指定するのは思いやりでもあります。
読んで感じたことを言葉で表現すると、受け手は共感することもあれば、反発することもあります。言葉にするということは、そういう受け手の反応を受け止めることです。
読書感想文の字数は、400字詰め原稿用紙にして3枚、計1200字が相場です。これだけの字数を書くには、推敲の時間を含めておよそ3時間は必要でしょう。
物語の場合、主人公をはじめとする登場人物の言動から、人はどんなことに心を動かされるのか、つまりどんなことに喜んだり、怒ったり、悲しんだりするのかを読み取ることがまず大事です。そしてストーリーの展開を追いつつ、気持ちの変化がどんな影響を及ぼしているかを拾い上げます。
それでは具体的な作法を示しましょう。
(1)1つの文は50~60字に。
文とは句点(「。」)で終わるひとまとまりです。1つの文が長くなると、意味を取りづらくなります。原稿用紙1枚に「。」が1つもない文章を想像してみればわかります。1つの文は50~60字にし、内容が伝わるかどうかを自分でチェックしましょう。
(2)「と~思った。」という表現や、「また」などの接続の語を何度も使わない。
「わたしは~と思いました」という表現を何度もしてはいけません。
「しかし」「だから」「また」といった接続の語は、それぞれ1回限りにします。
特に「また」は、複数のものを列挙するときの2つ目を示す接続語ですから、何度も使うと構成が不明瞭になります。
(3)構成は「序論・本論・結論」の「じょ・ぽん・けつ」の3つで。
まず「序論」。どんなところに心を動かされ、何を感じた(=学んだ)かを書きます。字数は全体の5パーセント(1200字なら60字)です。「どうしてこの本を選んだか」といった選書のいきさつを書くのはやめましょう。
【例1】この本を読んで、いつもとちがうことをしてみれば、ありふれた日常ががらりと変わり、刺激的な1日を送ることができると知った。(60字)
【例2】つまらないとしか思えなかったものが、次第に自分をぐいぐいひきつけてやまないものになっていくことを、この本は教えてくれた。(60字)
【例3】どんな大金を手にしても人は幸せになれるわけではないと実感し、少しほっとするとともに、生きることの難しさを学んだ気がする。(60字)
次に「本論」。場面を3か所抜き出し、1か所につき感じたことを1つずつ書きます。引用の際はカギカッコを使います。ここが感想文の全体の85パーセント(1200字なら1020字)を占めます。
最後に「結論」。主人公や登場人物になぞらえて、決意や希望を書くとよいでしょう。スピーチではないので、「みなさんはどう思いますか」のような呼びかけは無用です。字数は全体の10パーセント(1200字なら120字)です。序論と異なり、2文以上にします。
【例1】自分の毎日も特に変化のない繰り返しだ。けれど、勇気を出して新しいことに挑戦すれば発見もあるはずだ。たとえばいつもと違う道を歩いてみる。道行く人や風景にきっと刺激を受けるだろう。主人公がそうだったように、思いがけない出会いがあるかもしれない。(120字)。
【例2】幼稚園で同じ組にいた子のことを思い出した。特に仲がよかったわけでもなく、近くに住んでいながら今は話をすることもない。それぞれが違う世界を持って、かえって興味を覚えるようになった。お話のような偶然には期待できないから、今度、声をかけてみたい。(120字)
【例3】優秀な成績で有名な大学に入り、人のうらやむ職業につく。そんな人生を歩んでいながら主人公は自分を幸福だと思えない。挫折を経験したことのない人間には、弱者の気持ちを理解しようとしない欠点だけでなく、一度しくじったら立ち直れないもろさもあるのだ。(120字)
言葉で気持ちや考えを伝えるのはなかなか難しいものです。同じ世代や同じグループに属している相手なら、少々言葉足らずでも補い合って意思の疎通ができます。けれど、自分と違う世界に住む人や、異なる世代の人たちとのコミュニケーションには、表現する力が必要です。
正確な伝達力と豊かな表現力を身につけた人は、人の心を動かし、信頼を集めることができます。逆に「舌禍」という言葉があるように、不用意な発言や不適切な表現で評判を落とすこともあります。SNSやブログで発信した内容が、表現力が至らなかったために誤解を招き、「炎上」したという話もよく耳にします。
表現力を磨く訓練として読書感想文に取り組みましょう。
伊東 達矢
ご挨拶- 2024年10月 [2]
- 2024年9月 [2]
- 2024年8月 [2]
- 2024年7月 [2]
- 2024年6月 [2]
- 2024年5月 [2]
- 2024年4月 [2]
- 2024年3月 [2]
- 2024年2月 [2]
- 2024年1月 [2]
- 2023年12月 [2]
- 2023年11月 [2]
- 2023年10月 [2]
- 2023年9月 [2]
- 2023年8月 [2]
- 2023年7月 [3]
- 2023年6月 [2]
- 2023年5月 [2]
- 2023年4月 [4]
- 2023年3月 [2]
- 2023年2月 [2]
- 2023年1月 [2]
- 2022年12月 [2]
- 2022年11月 [3]
- 2022年10月 [3]
- 2022年9月 [2]
- 2022年8月 [2]
- 2022年7月 [5]
- 2022年6月 [2]
- 2022年5月 [3]
- 2022年4月 [6]
おすすめコンテンツ
Contents