伊東達矢校長ブログ
2025.05.26
男らしく、女らしく
母校である私立男子校の中学高校に勤めていたとき、「男らしくしなければいけない」と言われてきた生徒が少なくないと感じていました。男子校を選んで入学してから、男らしくしようとする意識はより強くなるのかもしれません。
男らしくというのは、多くの場合、強くあれという意味に使われます。その意識が時に暴言や暴力につながります。「男のくせに意気地なし」と思われるのを恐れ、強がるからです。
ジェンダー(gender)という言葉を耳にするようになりました。生まれつきの体の性別とは別に、「男の子なら泣かない」「女の子はピンクの服が好き」といった、文化的・社会的に構築された性差の概念を指します。名簿で男子と女子を混合にしたり、保母・看護婦を保育士・看護師に呼び変えたりするのは、ジェンダーレスの考えに基づいています。それは性別による差別や不平等をなくすという「ジェンダー平等」の達成につながります。
一方、性別はなくせませんから、男らしさ、女らしさを表現することもなくなりません。子どもたちの日常にも、男の子らしさ、女の子らしさを意識する場面は多くあります。
たとえば制服です。名進研小学校は、性別にかかわらず着用・使用できる制服やアイテムを取り入れています。そのデザインの違いをどのように捉えるかには、男の子らしさ、女の子らしさが関わってくると思われますが、学校としてはそれよりも自分らしさを大事にしてほしいと考えています。
小学生の男の子は自分のことを「ぼく」とか「おれ」とか言うようになりますが、女の子はしばしば高学年になっても一人称を自分の名前の呼び捨てで言います。これも男らしさ、女らしさの表れの一つと言えるでしょう。ただし、女の子であっても自分を「ぼく」と言う子が(少数ではありますが)確かに存在します。
わたしは、男らしく、女らしくという表現を一概に否定するものではありませんが、「男なら泣くな」「女のくせに出しゃばるな」のような言い方が子どもに無用なプレッシャーや偏見をもたらすことには、じゅうぶん注意を払うべきであると考えます。それは、女なら泣くのを我慢しなくていいとか、男なら積極的な発言をするのが当たり前だとかいった性差意識を子どもに植えつけかねないからです。
男だから、女だからという理由づけによって差別や不平等が助長され、子どもから自分らしさが失われることのないようにしなくてはいけません。わたしたちは、男らしく、女らしくという言葉に敏感になる必要があります。

伊東 達矢
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