伊東達矢校長ブログ

2022.06.13

駆ける、跳ねる、叫ぶ

 

子どものいる世界では、駆ける、跳ねる、叫ぶというのが日常です。

登校時、昇降口に立っているわたしを見つけると、1年生のお友だちが「こーちょーせんせーい、おはよーございまーす!」と叫びながら、ランドセルをカタカタ鳴らし、肩に掛けた水筒を右へ左へと振りながら、前傾姿勢になって、わき目もふらず駆け出してきます。「危のうございますよ。走らなくていいですから」と声をかけるのですが、走り出したら止まらないのが子どもです。息せき切ってわたしのところまでやってきます。中には勢い余ってわたしにぶつかってようやく停止する子もいます。

気をつけていないと廊下をぴゅーっと走り、別の子にぶつかったり、転んだりします。先生たちは口を酸っぱくして「廊下を走らない!」と言うのですが、目を離すと子どもたちはまた走り出してしまいます。それはまるで小さなつむじ風が通り過ぎていくようです。

立っているわたしのところに集まってきた子どもたちが口々に訴えてきます。「校長先生の眼鏡は、どうしてそんな形をしているんですか」「きょうのネクタイにライオンがついているけど、どうしてですか」「わたしのお母さんのつくるハンバーグがどうしておいしいか、わかりますか」。何と答えていいかわからず、「さて、えーと」とわたしが言いあぐねているあいだ、子どもたちはきまってジャンプしているのです。ぴょんぴょん跳ねているその姿には、いろいろ言いたくてたまらないという気持ちがあふれています。

休み時間になると、おおぜいのお友だちが引きも切らず校長室にやってきます。子どもたちは叫びながら室内を走り回ります。片時もじっとしていません。子どもの声は甲高いものですから、開いている扉から何事かとのぞきこんでくる人もいます。「騒々しいったらありゃしない」という状況に身を置きながら、頭では「こんなふうに思い切り声を出して走り回りたいのが子どもなんだ」などと思っています。大人もライブやコンサートで体を動かし、大声を出して盛り上がりますが、それと同じなのでしょう。

ところが高学年になると飛び跳ねなくなります。ジャンプしてこちらへ手を振る1年生を見ながら、隣にいた6年生のお友だちに「あなたたちはどうしてああいうふうにぴょんぴょんしないんでしょうね」と聞くと、「さあ」とそっけない。別の子は、「たぶん背が高くなって体格もいいからジャンプすると疲れるんじゃないかなあ」と面倒くさそうに、それでも答えてくれました。さらに「ちょっとその場でジャンプしてみてください」と頼むと、その子は少しやってみて「疲れます」と言ってやめました。

言いたくてたまらないけれど、言葉が見つからない。だから低学年のお友だちは飛び跳ねて訴えるのでしょう。学年が上がるにつれてボキャブラリーが増え、思いを言葉にできるようになったとき、今度はそれを口にするのをためらうようにもなります。恥ずかしいからかもしれませんし、プライドが邪魔をするからかもしれません。「ねえねえ、聞いて、聞いて」と言っていたころは言葉がなく、言葉を手に入れたときには「聞いて、聞いて」とは言い出せず、聞かれても「べつに」としか言わなくなります。

小学生の間に子どもたちは大きく変わります。身体も言葉使いも考え方も。それを実際に目にして子どもたちの成長をじかに感じられるのは、小学校教師という仕事の醍醐味の一つです。

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