伊東達矢校長ブログ

2023.02.06

タイパ

 コスパはコストパフォーマンスの略で費用対効果のこと。この費用を時間に代えたのがタイパ、タイムパフォーマンス。最近よく耳にします。

 コロナでオンライン授業が当たり前になりました。それを倍速で視聴するのはもはや普通のようです。スキマ時間に短時間の作業をするのも、時短料理がはやるのも「タイパがいい」からなのでしょう。

 労力や時間を有効に使いたい気持ちは誰にでもあります。「一石二鳥」も「時は金なり」も英語由来の言葉ですから、そういう気持ちは日本に限ったものでもありません。手間をかけずにうまくいって得をしたと感じると、誰だって嬉しいのです。コスパもタイパも、限られた中で最大の効果を発揮させようと工夫することにつながりますから、効率化には欠かせません。

 入学試験などの選抜テストにおいては、制限時間内に合格点を取ることが求められます。ゆっくり考えていて時間切れになってしまっては元も子もありません。「タイパがいい」ことはテスト中に必須の技術でしょう。ただしそのパフォーマンスを得るには、問題演習というトレーニングを積まなくてはいけません。どんな問い方があるかを網羅し、問いにどう答えるかを瞬時に判断できるようにする訓練です。

 訓練には時間が必要です。あるレベルに達するにはそれなりの時間がかかりますし、そのレベルをキープするためにはトレーニングを続ける時間がいります。ここを考え違いすると、「時間をかけずに(つまり楽をして)結果を得たい」という近道を模索するようになってしまいます。

 「学問に王道なし」の言葉通り、学びに近道はありません。地道な苦労と努力を重ねる以外にないのです。その過程においては、腰を据え、時間をかけてじっくり取り組む姿勢が大事です。そうして初めて「タイパがいい」技術を使えるようになるのです。

 学校教育は効率性からもっとも遠いところにあります。教育の成果はほとんど数値に表れません。子どもたちの「授業がよくわかる」「学校が楽しい」という感想は、教えた側としてはたいへんありがたいのですが、何にどれだけ手間をかけたことによるパフォーマンスなのか、説明できるものではありません。その中でもテストの点数は、数少ない、そしてだからこそ過剰に注目されてしまうパフォーマンスです。しかしその点数は、本人の努力の賜物なのか、教えた側の技能によるものなのか、学校や家庭の生活環境によるものなのか、はたまた「地頭」によるものなのか、明らかにできません。それらが渾然一体となった成果なのかもしれません。

 成長の過程にある子どもたちは、一度教えたからといってすぐに身につけてくれはしません。繰り返し時間をかけ、根気よく教え続けても、なかなか浸透していきません。同じ失敗をしたり、脇道にそれたりすることもしょっちゅうです。しかしそうしたことの積み重ねから徐々に成長していくのが子どもであり、その学びの場が学校なのです。教える技術や学ぶ方法にタイパやコスパの考えがあってもいいけれど、学ぶ目的が効率化にあってはいけません。

 「タイパがいい」ことをするのが目的ではないはずです。目的はあくまで有意義で豊かな時間を過ごすことにあります。目的と手段を取り違えては本筋を見失います。

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