伊東達矢校長ブログ

2026.05.17

入試の国語

 最近とみに「正解のない問いに答える力」が話題になります。変化の激しい現代、様々な課題を解決するために欠かせない力であると言われます。知識はネットで簡単に調べられるし、情報はAIがまとめてくれる時代、従来の知識偏重、暗記中心の学習はもはや時代遅れだというのも常識のようです。
 しかし、だからといって「正解のある問いに答える力」が不要になったわけではありません。当たり前のことですが、ネットにしろ、AIにしろ、使いこなすには知識(知っていること)と技能(活用できること)が必要です。知識・技能が能力の土台であり、学校教育で身につけるべきものであることは、いまも昔も変わりません。「正解のある問いに答える力」をおろそかにして、「正解のない問いに答える力」が身につくはずはないのです。
 入学試験(入試)では「正解のある問いに答える力」が試されます。そして、入試が選抜のためのテストであり、得点の高い順に合格が決まるものである以上、受験者には、速く、確実に正解を導く力が求められます。基準点に届けば合格となる到達度テストとはこの点が異なります。入試は量と時間との勝負です。速く、確実に正解を導くには、問題を解く方法の習得も大事ですが、問題量を確保し、解く時間をかけるというトレーニングの積み重ねが最も重要です。
 わたしは長年、入試の国語問題に接してきました。出題する側の経験もあります。国語には豊かな発想力と創造性が大切だと言われますが、その発想力や創造性を身につけるには基本的な知識・技能が必要です。入試問題は「正解のある問い」を通し、受験者の知識・技能を測定するものです。感覚で解けるものではありません。
 入試の国語問題のオーソドックスな出題形式は、「本文」と呼ばれる文章があり、「これを読んで、後の問いに答えなさい」というものです。本文には傍線や空欄があり、それについて設問が用意されます。
 実際の設問を見てみましょう。

1 傍線部「彼女が今、何をしているのかがわかった時、勝呂(すぐろ)の心には寂しさと怒りに似た気持とが同時にこみあげてきた」とあるが、どういうことか。その説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

2 傍線部「あっさり手を振る」とあるが、その説明として最も適当なものを、次のアからエまでの中から選びなさい。

3 傍線部「リングの内側にボールが入れば、自分が閉じこもっていた窮屈な世界に、新たな扉が開くように思えた」とはどういうことか。最適なものを次の(ア~オ)のうちから一つ選び、記号で答えなさい。

 いずれも本文は小説で、設問は本文の傍線部分を言い換えて説明した選択肢から正解を一つ選ぶ形式です。ちなみに、1は大学入学共通テスト、2は愛知県公立高校、3は東海中学校(名古屋市)の国語の問題で、2026年に実施されたものです。
 選択肢は出題者が作っていますから、当然のように迷わせるようになっています。受験者は紛らわしい四つないし五つの選択肢を読んだ上で、それらを本文の記述内容と照らし合わせ、傍線部分に符合しない箇所のある選択肢を消し、矛盾なく符合する正解の選択肢を、迅速かつ確実に導かなくてはいけません。この作業に訓練、つまり問題を解く量と時間という問題演習の経験がものを言うのは明らかです。必要なのは、パズルを解く力でも、暗記した知識の量でもなく、国語を正確に読み解く力であることは言うまでもありません。
 入試問題は、新傾向の出題方式があっても、「正解のある問いに答える力」を求めるものであることは変わりません。そして「知識偏重、暗記中心」というのも一面的な見方に過ぎないのです。

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