伊東達矢校長ブログ
2026.05.22
競い合い・助け合い・歩み寄り
「最初はグー、じゃんけんぽん!」
きょうも学校のあちらこちらで子どもたちがじゃんけんをしています。
遊ぶ順番、給食のお代わり、グループ決めなど、その場で全員の意見を通すことができないとき、じゃんけんの登場です。勝てばうれしいし、負ければくやしいけれど、どの子も結果を素直に受け入れます。それは、じゃんけんで決めるのは公平だと思うからでしょう。
子どもたちとじゃんけんをするとき、「わたしはいつもグーを出しますよ」と伝えています。当然、子どもはパーを出し、「勝った!」と喜びます。ところが、何度もじゃんけんをしていると、わざわざチョキを出してくる子が出てきます。そのときわたしは、「勝たせてくださってどうもありがとうございます」と頭を下げます。するとその子は、なんとも言えない笑顔を見せます。
子どもも人の役に立ちたいという気持ちを持っています。負けるとわかっていながらチョキを出す子どもたちには、自分に直接的な利得がなくても、相手を喜ばせたいという気持ちがあります。
集団で過ごす学校生活の中で、子どもたちは社会性を身につけます。そのために次の三つの経験を積まなくてはいけないと考えます。
一つ目は「競争(コンペティション competition)」です。同じ学齢の中で、それぞれ自分がどのくらいの力を発揮できるかを競い合う経験は、モチベーションの向上や維持に有効です。「ライバルがいたからがんばれた」というのはよく耳にする言葉です。上の学年の子が自分の学年だったときの姿をモデルにして競うことも向上心を高めます。
二つ目は「協力(コオパレイション cooperation)」です。みんなで力を合わせ、助け合うことで、一人ではできない、大きなことを成し遂げる経験は、大きな達成感をもたらします。運動会や文化祭でみんなが助け合ったときのことは、後になっても思い出深いものとしてそれぞれの心に残るものです。
三つ目は「妥協(コンプロマイズ compromise)」です。妥協というとネガティブな感じを受けますが、互いに歩み寄ること、意見をすり合わせることと考えれば、社会性を身につける上で欠かせないものだとわかります。
集団の中には異なる意見もあります。違う考えの人といっしょに行動するには、どこか歩み寄れるところはないか話し合い、落としどころを探ることが必要です。時には譲らなくていけないこともあるでしょうし、結果が思うようなものにならないこともあるでしょう。けれども、歩み寄った結果、集団全体がうまくいくということになれば、折り合いをつける経験は大いに意味があると考えられます。歩み寄りによって自分が貢献したという自己有用感を得られるからです。自己有用感は社会性とむすびついています。
グーを出すとわかっている相手にチョキを出す子どもは、自分が譲ることで相手が喜ぶことを知り、自分の行動に価値があることを学びます。そして、その思いやりの気持ちは決して一方通行ではなく、まわりまわって全体に広がり、めぐりめぐって自分に戻ってくるはずです。

伊東 達矢
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