伊東達矢校長ブログ
2026.10.30
人生の選択肢
人生におおかたの見通しがつくようになった大人は、自分が築き上げてきたことから経験に基づいて判断するものです。そのため、前例に照らして経験のないことには慎重になりがちです。
それに比べて子どもの場合、これからどのような人生を歩むか、本人はもとより、他の誰にもわかりません。だから「子どもには無限の可能性がある」などと言われるのでしょう。
その無限の可能性がある子どもに対し、「キャリア教育」が推進されています。文部科学省は「一人一人が将来に向けて社会や職業で自立し、自分らしい生き方を実現するために必要な基盤となる能力や態度を育てる教育」と定義し、次の4つの能力を育成するものとしています。
1 人間関係形成・社会形成能力
多様な他者とコミュニケーションを取り、協力しながら社会に参加する力
2 自己理解・自己管理能力
自分の特徴や役割を正しく理解し、前向きに目標や行動を管理する力
3 課題対応能力
直面する課題を主体的に発見し、分析して解決へと導く力
4 キャリアプランニング能力
将来の目標を持ち、学業や経験をどのように結びつけるか計画を立てて実行する力
確かにこれらは子どもたちが将来に向けて身につけるべき力だと思います。
一方で具体的な将来の職業となると、現在ある仕事が将来もあるとは限らないと言われる今日、先行きが見通せないのも事実です。
これまではある程度、将来の選択肢が見えていました。
学校の教師には、この生徒にはこんな仕事が向いているかもしれないといった勘のようなものが働くことがあります。
高校で担任をしていたとき、クラスにとても実直な生徒がいました。フォロワーシップに長け、文化祭では裏方としてみんなを支え、綿密な記録を取りました。面談で、公務員の仕事が合っているのではと話しました。彼の結婚式に呼ばれましたが、果たしてある自治体の公務員になっていました。メッセージカードには、定規を当てて丁寧に揃えた字が並んでいて、その几帳面な癖は高校生のときと変わっていませんでした。
けれども、いまやこうした教師の勘も頼りになりそうにありません。
急速に進化した生成AIが瞬く間に普及し、仕事の選択肢も大きく変わりつつあります。子どもたちの「将来の夢」(その多くは「なりたい職業」)の実現予測は難しく、仕事がAIに取って代わられるとは限らなくても、どんな仕事をして人生を送るかということについて、従来の経験の多くは通用しなくなります。
教育の場では、知識・技能の獲得において、これまでは習得して正確に再現することが重視されてきましたが、これからは多くの情報を選択して理解し、活用することが大事だとされています。そして、決まった正解を導き出すことから、自ら問いを立て、複数の答えを比較して判断することへシフトするために、生成AIを活用して協働することが求められています。
変化が激しく、先行きの不透明な現代にあって、学び手である子どもたちの能力をいかに引き出せるか、学校はその課題に直面しています。


伊東 達矢
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