伊東達矢校長ブログ
2024.08.30
勉強して何の役に立つの?
この夏も、多くの卒業生が名進研小学校を訪れました。かつて通った教室を懐かしがり、先生に再会し、元気な後輩たちの様子に目を細めていました。校長室のメッセージカードに「名進研小学校でよかった!」と書き残していった卒業生もいます。
学校で学ぶことにどんな意味があるのでしょうか。ときどき子どもは、勉強して何の役に立つのかと考えます。この問いに大人はどう答えるでしょう。
勉強すると「いい学校」に入れて、「いい職業」に就けて、「いい配偶者」を迎えられるという答えなら、それは利益で子どもを誘導することにほかならず、あまり感心できません。
誰でも学校に通ったことがあります。そこでの学びは、知らなかったことを知る、わからなかったことがわかる、できなかったことができるようになるという経験であったはずです。この経験は特に初等教育で重要です。子どもには、知らないこと、わからないこと、できないことがたくさんあります。子どもにとっては、知りたい、わかりたい、できるようになりたいという衝動が学習への最も強い動機なのです。
学校生活を送っていると、教科の学習に限らず、難しくて答えが見つからないことや、簡単に解けそうもない問題に出会います。そんなときの子どもの気持ちが、「学校で勉強することが何の役に立つのか」という言葉に表れます。
それが何の役に立つのか、その意味や有用性がわからないからこそ、子どもは学校で学ばなくてはいけないのです。教育の価値がわからないから、教育を受ける必要があるのです。
ここが技術を学ぶこととの大きな違いです。たとえば自動車学校は、免許の価値をあらかじめ知っている人が通うところです。だから首尾良く免許を取得したら、もう通うことはありませんし、「母校」の自動車学校に集まることもないでしょう。
学校教育は、勉強の成果を確認するだけでなく、学びを通じて他者との関係作りを経験し、人間的に成長していくことを実感するものです。
学校での学びが「役に立つ」とすれば、そうした成長の実感を懐かしく振り返ったときのことでしょう。
伊東 達矢
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