伊東達矢校長ブログ
2024.10.12
規律性か協調性か
決められたルールを理解し、しっかり守れることを規律性があると言います。規律性のある人は、約束やマナー、時間に厳格で、切り替えも早く、ルール違反に敏感です。
状況に応じ、臨機応変に他者に合わせられることを協調性があると言います。協調性のある人は、コミュニケーションを取ってみんなと協力することができます。
規律性は必要ですが、ルールに厳しすぎると周りの人たちとの調和を乱すことがあります。ルールを破ったり、無視したりする人に対して強い憤りを覚え、攻撃的になります。
協調性は大事ですが、人に合わせるのに必死になるあまり、集団が非倫理的な行為に走ってしまうことがあります。集団心理の恐ろしさはよく知られているところです。
規律性も協調性も、集団社会である学校の生活で子どもたちが身につけなくてはいけないものとされています。だから学校では、ルールを守ることと、みんなに合わせることが当たり前のように指導されています。
けれども、規律性と協調性を両立できない子もいます。精神科医の本田秀夫は、そんな子のためにこのように考えることを提案しています。
「絶対に人に合わせることしかできない人と、絶対にルールしか守れない人だったら、どちらを取る?」と。
人に合わせるのは相対的な基準によるもので、相手や場面によって対処の仕方に揺れが出るのに対し、ルールを守るというのは、融通のきかない面はあるものの、信頼度に揺れがありません。負の影響はどちらが少ないかという視点で考えることが重要です。
本田はまた、子どもが大人になって社会にうまく出ていけるかどうかのカギは、自律スキルとソーシャル・スキルにあると言っています。自律スキルを身につけるためには、「自分にはこんなことができる」という自己肯定感を高める一方で、「これは自分にはできない(だからできる人に頼もう)」といった自己の限界を把握して判断できるようにすることも必要だと指摘します。そしてソーシャル・スキルとは、ルールを守れることと、他者に相談できることであり、決して人に合わせることではないと強調しています。
ソーシャル・スキルというと協調性をイメージしがちですが、実は社会性を養うことなのです。だから、ソーシャル・スキルが身についていない子にみんなに合わせることを強いると、人とのつきあいが嫌になってしまいます。むしろ、規律性を優先し、ルールを守ることに専念させるべきでしょう。ルールは守れて当たり前というのではなく、規律性を身につけていることをきちんと褒めることも大切です。
伊東 達矢
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