伊東達矢校長ブログ
2024.11.29
紙の本
情報化が急速に進んでいます。世の中の出来事は、紙の新聞やテレビの定時ニュースからではなく、自分の好きな時間にスマホのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上に流れてきたものを拾い読みして得るのが普通になりました。じっくり考えるより、すばやく情報をキャッチし、結論を出すのがスマートであるかのようです。
学校では、ICT(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー)教育が推進され、今までアナログで行っていた教育は急速にデジタル化しています。タブレット端末、デジタル教科書、電子黒板など、情報機器の利用は当たり前です。言うまでもありませんが、スマホもICT機器の一つです。
文部科学省は、「もはや学校のICT環境は、その導入が学習に効果的であるかどうかを議論する段階ではなく、鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なものとなっていることを強く認識する必要がある」(2019年6月「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」)と言い、教育現場は否応なく情報化に対応せざるをえない状況に置かれています。
デジタル技術やデータ活用に精通する人が「DX(デジタルトランスフォーメーション)人材」としてもてはやされる一方で、SNSがメンタルヘルスに及ぼす悪影響が問題になっています。オーストラリア政府は最近、16歳未満のSNS利用を禁止する法整備に乗り出しました。日本の小中学校でも、スマホの持ち込みを禁止したり、学校での利用を制限したりするのが一般的です。
電車内で器用に新聞を読む人はいなくなりました。文庫本を広げる人もあまり見かけません。目につくのはスマホを操作する人です。ゲームに熱中するか、SNSの書き込みを指でなぞり、目で追っています。電子図書を読む人もいるかもしれませんが、スマホの普及によって紙の本を読む時間と量が減っているのは間違いなさそうです。
2022年に文科省が調査したところ、21歳で「この1カ月に読んだ紙の書籍の数」について「0冊」と答えた人が62.3%に上りました。その若者が10歳だった2011年の調査では「1カ月に0冊」は10.3%でしたので、年齢が上がるにつれて紙の本を読まなくなる傾向が浮かび上がります。
休み時間に開放している校長室に、かつて読んだ本や、自分で買いそろえた世界児童文学全集(岩波書店・全30巻)などを並べています。「この絵本、知ってる!」と目を輝かせてとびつく子や、「これ、借りていってもいいですか」と聞いてくる子がいて、実に楽しいものです。
子どものころに読んだ本は、大人になっても忘れません。AI(人工知能)にレコメンドされる本よりも、自分が読んだことのある本のほうがずっと自信をもって勧められます。「これはわたしが小学生のときに読んだ本なんだよ」と言われた子が、書店や図書館で自分のお気に入りの本を見つけてくれたら、とても嬉しい気持ちになります。
スマホやパソコンのない子ども時代を過ごした大人は、紙の本の良さを子どもに伝えることができます。デジタル化の流れに抗う必要はありませんが、アナログだからできることも忘れてはいけません。
伊東 達矢
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